不眠症・睡眠障害
訪問看護においては、下記の睡眠衛生の知識をもとに利用者さんお一人お一人にあった生活環境調整といったサポートをおこないます。
不眠症は睡眠障害の中の一種です。睡眠を十分とれる時間的余裕があるにもかかわらず、眠れないことが続き、その結果昼間の生活に何らかの問題があるものが不眠症と定義されています。
通常これらに伴って、不眠に対する不安が認められます。具体的な頻度や期間でいうと、この様な不眠の訴えがしばしば見られ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヵ月間は持続するものです。
なお精神的なストレスや身体的苦痛のため一時的に夜間良く眠れない状態は、生理学的反応としての不眠ではありますが不眠症とはいいません。
睡眠障害にはこの不眠症以外に、睡眠時無呼吸症候群のような呼吸の問題、睡眠リズムの乱れ、足のむずむず、夢に伴う行動の問題、過剰に眠気のあるナルコレプシーなど様々なものがあります。疾患によっては睡眠専門クリニックでの詳しい検査が必要なこともあります。
5つの原因
不眠症の原因は大きく分けると5つに分けられます。英語の頭文字をとって 「5つのP」と呼ばれています。
1. 生理学的要因(Physiological)
生活習慣や睡眠環境に原因があるケースです。例えば夜間勤務の仕事で昼に眠る必要がある、受験勉強による生活リズムの昼夜逆転、海外旅行や出張による時差ボケ、周囲の騒音、明るすぎる、暑さや寒さ、枕や布団が体に合っていない、といったことです。ライフスタイルが大きく変わると、眠ろうとする機能が低下し、眠る機会が妨げられることがあります。
アドバイス
まずは睡眠時の環境を整えましょう。スマホを夜間モードにしたり、部屋の照明を落とし、起床時にはカーテンを開け明るい部屋ですごすなど、光のコントロールをしてみましょう。その他にも、ご自分の心と体がリラックスできるよう工夫してみましょう。
2. 心理的な要因(Psychological)
不安や心配事が気になって眠れない、 楽しいイベントの前に気が高ぶり眠れないといったことは、みなさん経験があると思います。また家族や親友のトラブル、仕事上の問題など何らかのストレスに関連して起こる不眠などもこちらに含まれます。
アドバイス
眠れなくなった頃の出来事を検討することで、問題が明確化し対処できることもあります。また心配事の原因を取り除くのが難しい場合はリラックスをする練習も有効なことがあります。
3. 薬理学的な要因(Pharmacological)
薬の副作用や飲食物の影響が原因のケースです。カフェインが眠気を覚ますことは皆さんも知ってらっしゃることかと思います。また、たばこは覚醒作用があり、アルコールも睡眠の質を下げます。ステロイド薬やインターフェロン、パーキンソン病の薬などが、不眠症を起こすこともあります。
アドバイス
まずはお薬手帳やサプリメントを医師にお見せ下さい。また飲酒・喫煙・カフェイン(コーヒーなど)摂取の習慣を確認することが大切です。なお普段飲んでいるドリンク剤の中にカフェインが入っていることもありますので確認してみるのも良いでしょう。
4. 身体的な要因(Physical)
痛みやかゆみ、せき・息苦しさなど、お体の病気による症状が続いていると寝つけないことがあります。頻尿のため夜間に何度も目覚めることも該当します。具体的な例としては外傷や関節リウマチなどの痛みを伴う疾患や、湿疹や蕁麻疹などの痒みを伴う疾患、喘息発作や頻尿、花粉症などがあります。
アドバイス
お体の病気や症状を治療することにより不眠も改善することがありますので、かかりつけの先生がいらっしゃる場合は症状を相談してみましょう。
5. 精神医学的な要因(Psychiatric)
精神的な病気(不安障害やうつ病、統合失調症など)は、不眠を伴うことがあります。過剰な不安がある場合は寝つきが悪くなることがありますし、憂うつな気分が続いたり、これまで楽しかったことが楽しめなかったりするのは、うつ病による不眠かもしれません。睡眠以外にそういった困りごとがある際はかかりつけの医師にお伝えいただければ幸いです。
アドバイス
専門の医師に相談してみましょう。必要があれば不眠の原因となっている疾患に対しての治療が有効です。
不眠の症状による4つの分類
不眠は症状により大きく4つに分けることができます。
- 入眠困難:夜間なかなか寝つけず、寝つくのに普段より2時間以上かかるもの
- 中途覚醒:一旦寝ついても夜中に目がさめやすく、2回以上目がさめるもの
- 熟眠困難:朝起きたときにぐっすり眠った感じの得られないもの
- 早朝覚醒:朝、普段よりも2時間以上早く目が醒めてしまうもの
年齢による睡眠時間の違い
年齢を重ねるにつれ睡眠時間が減ってくるのは皆さんご承知のことと思います。実際の夜間睡眠時間は10歳代前半で8時間以上だったのが、25歳では7時間、45歳で6.5時間、65歳は6時間と、年齢が上がるにつれて減っていくと報告されています。このため、ご高齢の方で「8時間寝ないと」というお気持ちから、布団ですごし続けることで、眠れない時間を逆に強く味わい疲れてしまうケースなどがあるわけです。睡眠時間が足りているかどうかは、日中の眠気から判断されることをお勧めします。
非薬物療法の例(睡眠障害対処12の指針)
以下に厚生労働省の研究班が、睡眠障害を事前に防ぐための方法をまとめたものを記載します
1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
- 睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
- 歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
- 就床前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
- 軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
- 眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする
4. 同じ時刻に毎日起床
- 早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
- 日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
5. 光の利用でよい睡眠
- 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
- 夜は明るすぎない照明を
6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
- 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
- 運動習慣は熟睡を促進
7. 昼寝をするなら、15 時前の 20~30分
- 長い昼寝はかえってぼんやりのもと
- 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
- 寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
- 背景に睡眠の病気、専門治療が必要
10. 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
- 長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
- 車の運転に注意
11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
- 睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
- 一定時刻に服用し就床
- アルコールとの併用をしない
